古くて新しい「ポルトガルワイン」の魅力

特にワインの世界では、昔からスペインとポルトガルは同一視されがちですが、実は全く異なります。
ポルトガルの食文化は日本と共通性が多く、シンプルな調理法が中心。
また輸出の多いスペインと異なり、自分たちが飲むためのワイン作りが中心です。
カーヴドテールでは、既に2010年にポルトガルのワイン産地を巡り、日本へ紹介するべきワイン産出国として、ポルトガルに注目をしていましたが、スペインワインの流行に押され、日本へはポルトガルらしいワインの輸入が殆どありませんでした。
あれから10年以上が経ち、ポルトガル人パウロさんが輸入を始めたところから、ようやくカーヴドテールがずっと紹介したかった、本当のポルトガルワインが手に入るようになりました。
今回の特集では、パウロさんの協力を得て、まずは皆さんにポルトガルを知って頂くインタヴューを行いました。
日本人が初めて接した欧州人であり、ワインを伝えた国ポルトガル。ぜひ、ご覧ください。
教えてパウロさん!
ポルトガルの魅力と日本とのつながり。

パウロさんの経歴について教えてください。

私は元々、生化学を先行しており、ワインとの最初の接点は、研究所におけるワイン成分の分析業務でした。
この経験を通じてワインへの関心が深まり、ワイナリーでの実務経験やWSETディプロマ資格取得を経て、ポルトガルワインの輸出事業をポルトガルで立ち上げました。
更なる市場拡大を目指し、早稲田大学と提携するEUが派遣する社会人向けMBAプログラムに参加したことを契機に、日本においてポルトガルワインの輸入販売会社「ポルトガル・トレード」を設立しました。
その後は、ポルトガルと日本の両国でビジネス展開をしていましたが、在ポルトガル日本ポルトガル商工会議所よりお声がけをいただき、現在は会頭として活動しています。
ワインビジネスにとどまらず、ポルトガルと日本の二国間における経済・文化交流の推進に貢献できることに、大きな誇りと責任をもって取り組んでいます。
ポルトガルはどんな国でしょうか?簡単にご説明いただけますか?

ポルトガルは、ヨーロッパの西の端にある小さな国ですが、非常に多様な文化と自然を持つ国です。
確かに日本と同じく海に囲まれ、魚介やお米をよく食べる食文化も似ていますが、それに加えて、ポルトガルは「ワイン王国」としても知られています。
国民1人あたりのワイン消費量は世界トップクラスで、食卓にはいつもワインがあります。また、ポートワインやマディラワインなど、世界的に評価される酒精強化ワインの原産地でもあります
加えて、歴史的な街並み、美しい海岸線、温暖な気候、人々の温かさなどが世界中から観光客を惹きつける魅力の一つです。
火縄銃、地球儀、羅針盤、キリスト教、天婦羅やカステラのほかに有名なものは?

実は「金平糖(コンペイトウ)」や「パン(ポルトガル語でPão)」もポルトガル由来の言葉です。
また、日本における西洋音楽の起源の一つとされる「オルガン」や「ハモニカ」などの楽器文化も、ポルトガル人宣教師が持ち込んだと言われています。
逆に、ポルトガルには「和紙」や「漆器」などの日本独自の工芸品が影響を与えた歴史もあります。
ポルトガルは日本と最も早く文化交流を持ったヨーロッパの国であり、今も「親日国」として日本との友好関係を大切にしています。
ポルトガル人は真面目な人が多いイメージがあります。日本人と比べると如何でしょうか?

ポルトガル人は、一般的に勤勉で責任感が強く、誠実な性格の人が多いと思います。
一方で、仕事の合間に家族や友人との時間を大切にするという、やや「ゆとり」を持った価値観もあります。
日本人のようにきっちりとした時間意識は少し緩やかかもしれませんが、根底にある「相手を思いやる気持ち」や「協調性」は共通していると感じます。
日本の方々とはとても気が合うとよく言われます。
ポルトガルは世界で最初に、ワイン法(原産地呼称制度)を制定したと聞いています。その背景を教えて下さい。

はい、ポルトガル北部のドウロ地方では、1756年に世界で最も早くワインの品質管理と原産地保護を目的とした法制度が確立されました。
これはポートワインの品質を守るためで、マルケス・デ・ポンバルという政治家が主導しました。
この制度は後のフランスやイタリアのAOC制度やDOC制度にも影響を与え、今日のワイン法の先駆けとなりました。
まず知るべきワイン産地と、その特徴を教えて下さい。

まずご紹介したいのは以下の5つの産地です。
1. ドウロ(Douro):ポートワインの故郷であり、壮大な渓谷と急斜面に広がるブドウ畑が特徴。赤ワインも力強くて複雑。
2. アレンテージョ(Alentejo):広大で日照時間が長く、フルーティで親しみやすいワインが多い。
3. ヴィーニョ・ヴェルデ(Vinho Verde):北部の爽やかで海からの影響を豊富に受けたミネラル感が特徴の白ワイン。若々しく、和食にもよく合います。
4. リスボン(Lisboa):海沿いに位置し、冷涼な気候から生まれる白・赤ともにバランスの良いワインが特徴。コストパフォーマンスにも優れ、近年注目されています。
5. セトゥーバル(Setúbal):アロマティックなモスカテル種の酒精強化ワインや、しっかりとした味わいの赤ワインで有名。アラビダ山脈の影響を受けた独自のテロワールがあります。
ヴィーニョヴェルデが注目されている理由は?

ヴィーニョ・ヴェルデは、その軽快な飲み口と爽やかな酸味が、健康志向やナチュラル志向の高まりとマッチしています。
また、アルコール度数が比較的低く、アジアの料理とも相性がよいため、欧州や米国のみならず、日本や韓国でも注目されています。
夏場のサマースタイルで楽しめる他、食事をより引き立てる事の出来るワインで、繊細な味わいを楽しむ日本食とも素晴らしい相性です。
ポルトガルの代表的な料理と、合わせるワインの産地または品種を教えて下さい。

もちろんです。
では、代表的な5つの料理と定番の組み合わせをご紹介していきますね。
1. バカリャウ・ア・ブラース(Bacalhau à Brás)
→ ヴィーニョ・ヴェルデの白ワイン(ロウレイロ種など)
2. アレンテジャーナ風豚とアサリ(Carne de Porco à Alentejana)
→ アレンテージョ産の赤ワイン(アリカンテ・ブーシェ種など)
3. アローシュ・デ・ポルヴォ(Arroz de Polvo)(タコの炊き込みご飯)
→ ミネラル感のある白ワイン(ヴィーニョ・ヴェルデ地方のアルバリーニョやアリントなど)※タコの旨味とご飯の一体感に、爽やかでややボディのある白ワインが抜群に合います。
4. アローシュ・デ・マリスコ(Arroz de Marisco)(魚介のリゾット風炊き込みご飯)
→ セトゥーバルまたはリスボン産のアリントやフェルナン・ピレス種を使った白ワイン ※魚介の旨味とトマトの酸味が白ワインのフレッシュさと絶妙に合います。
5. パステル・デ・ナタ(Pastel de Nata)
→ ポートワインのホワイトや、やや甘口のマディラワイン。
もっと詳しく知りたい!
【ユニークなポルトガルの土着品種】
250を超えるネイティブ品種(土着品種)と、比類なきテロワールの多様性を備えたポルトガルワイン。
その中でも、最も知名度の高いポルトガル品種10種をご紹介します。

1. アルバリーニョ(Alvarinho)
アルバリーニョは、桃と柑橘果実、しばしばトロピカルフルーツや花のようなノートを主体とし、リッチでミネラリティを帯びた個性豊かなワインを生み出す。特に有名な産地は、ヴィーニョ・ヴェルデのモンサォン・イ・メルガッソ副地方である。アルバリーニョは、一般的なヴィーニョ・ヴェルデに比べてよりボディに富み、アルコール度数が高い。また、しばしば単一品種でボトリングされ、ラベルにその名が表示される。このようなワインは、ボトリング直後も美味しいが、年月を経てさらに向上する可能性もある。アルバリーニョのクオリティーは、ポルトガルの他地方の生産者からも評価され、現在南部にまでゆっくりと広がりつつある。

2. アリント/ペデルナァ(Arinto/Pedernã)
アリント/ペデルナァは、リンゴとレモンの風味を主体とした、エレガントでミネラリティ豊かな白ワインをもたらす。若々しくフレッシュな状態も美味しいが、年数を経るにつれ複雑味を帯びる。アリントは、有名なブセーラスのワインの主要品種である。果実の成熟が遅く、暑い気候でも清涼感を発揮するのが大きな利点だ。しばしば、暑く乾いた気候の他の白ブドウ品種にブレンドすることで、フレッシュなエレガントさを添える。また、持ち前の高い酸は、スパークリングワインの生産にも有利。

3. エンクルザード(Encruzado)
エンクルザードは、エレガントでバランスがよく、花や柑橘系のデリケートなアロマと、しばしば魅力的なミネラルを感じさせるフルボディーの白ワインを生み出す。アンオークスタイルのピュアなエンクルザードも美味だが、樽発酵や樽熟成にもよく応え、より深く繊細で骨格のしっかりとした、年月とともにさらに複雑性を増していく長期熟成型のワインとなる。この品種は、特にダン地方でもっとも多く見受けられるだろう。栽培面では、暑い気候であってもフレッシュな酸を保ち、甘くなり過ぎることなく完璧に成熟する。

4. フェルナン・ピレス/マリア・ゴメス(Fernão Pires/Maria Gomes)
フェルナン・ピレス/マリア・ゴメスは、マスカットを思わせる豊かな芳香を備え、軽やかでフルーティーな白ワインをもたらす。柑橘果実の味わいとフローラルな芳香は、早飲み用に早く収穫した場合にもっとも鮮烈。この品種はスパークリングワインにも用いられ、ときとしてスイートワインを造るために遅く収穫される場合もある。ポルトガルでもっとも多く栽培される白ブドウであり、全国的に幅広く存在するが、特にペニンスラ・デ・セトゥーバル、テージョ、リスボン、バイラーダ地方を含む西海岸沿いに目立つ。マリア・ゴメスの別称でも知られる。

5. バガ(Baga)
遅く収穫したこのブドウはタニックなワインを生み出し、若いうちは収れん性が強く、熟成するにつれ複雑性を増す。ボトリング当初のバガは、チェリーやセイヨウスモモの風味をもつ、リッチで濃厚な赤ワインである。熟成年数を経るにつれ、柔らかみを増し、ハーブ、モルト、シダー、タバコの葉のような複雑なフレーバーを帯びる。バイラーダが主要な地方だが、ダンを含むベイラスの他地方でも成育する。また、スパークリングワインのベースにも使われる。

6. トウリガ・フランカ(Touriga Franca)
トウリガ・フランカは、花々やブラックベリーなどの豊かな芳香と濃厚な色調を備えた、堅牢でリッチなワインを生み出す。この品種は、ポートワインの公式推奨品種5種のうちのひとつに数えられているほか、ブレンドのドウロワインにも使われる。実際、ドウロ渓谷でもっと幅広く栽培されているブドウであり、一般的にブレンドに用いられる。

7. トウリガ・ナショナル(Touriga Nacional)
堅牢で濃厚な色調のワイン(ポート)をもたらすトウリガ・ナショナルは、スミレ、リコリス、熟したカシスやラズベリーとともに、ベルガモットの微妙なハーブのヒントを思わせる複雑なアロマとフレーバーを有する。北部が原産だが、現在ではポルトガル全土で長期熟成型ワインを生み出すポテンシャルを備えたブドウとして広く栽培されている。

8. アラゴネス/ティンタ・ロリス(Aragonez/Tinta Roriz)
アラゴネス/ティンタ・ロリスから生まれる繊細でエレガントな赤ワインは、赤い果実、プラム、ブラックベリーのアロマと、熟成のポテンシャルをもたらす堅牢なタンニンを備えている。ポルトガル北部ではティンタ・ロリスと呼ばれ、ポート及びドウロワインにおけるトップ品種のひとつであるほか、ダン地方にとっても重要なブドウだ。アレンテージョ地方ではアラゴネスと呼ばれ、一般的にトリンカデイラなど他の品種とのブレンドに用いられる。

9. トリンカデイラ/ティンタ・アマレラ(Trincadeira/Tinta Amarela)
トリンカデイラ/ティンタ・アマレラは、素晴らしく魅惑的なラズベリーフルーツ、スパイス、ペッパー、ハーブのフレーバーと、非常に爽やかな酸を備えた赤ワインをもたらす。このブドウはポルトガル全国で成育するが、特に暑く乾いたエリアに適し、最良なのはおそらくアレンテージョ地方だろう。ドウロ地方では、ティンタ・アマレラの名で知られる。

10. カステラォン(Castelão)
ポルトガル南部でもっとも多く栽培されるブドウのひとつであり、シダーやシガレットケースへと発展するラズベリーフルーツのアロマを備えた、堅牢で繊細なワインを生み出す。首都リスボンの南、ペニンスラ・デ・セトゥーバル地方のパルメラ地方のような、砂地の土壌にもっとも適している。
※参照元:ワインズ・オブ・ポルトガル